震度7に耐える?旧耐震マンションに必須な耐震診断の真実と安全性

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「自分が住んでいるマンションは、大地震が来ても本当に大丈夫だろうか?」

日本に住む私たちにとって、地震への備えは常に意識すべき重要なテーマです。特に、築年数の古いマンションにお住まいの方や、購入を検討している方にとって、「旧耐震基準」という言葉は大きな不安要素ではないでしょうか。

「旧耐震のマンションは震度7に耐えられない」という話を耳にするたびに、漠然とした不安が募るかもしれません。しかし、その一方で「価格が手頃で立地が良い」といった魅力もあり、判断に迷う方も多いはずです。

この記事では、旧耐震基準のマンションが持つリスクの真実と、その安全性を確認するために不可欠な「耐震診断」について、専門的な視点から徹底的に解説します。

この記事を読めば、以下のことが分かります。

  • 旧耐震基準と新耐震基準の決定的な違い
  • 旧耐震マンションが震度7クラスの地震に耐えられる可能性
  • 命と資産を守る「耐震診断」の費用、流れ、補助金制度
  • 耐震診断結果の正しい見方(Is値など)
  • 購入、居住、売却、それぞれの立場での賢い向き合い方

漠然とした不安を具体的な知識に変え、あなたとあなたの大切な家族の未来を守るための第一歩を、ここから踏み出しましょう。

  1. そもそも「旧耐震基準」とは?新耐震基準との決定的違い
    1. 1981年5月31日を境とする建築基準法の大きな転換点
    2. 想定する地震の規模の違い【震度5強】と【震度6強~7】
    3. あなたのマンションはどっち?竣工日ではなく「建築確認日」で判断
  2. 【結論】旧耐震マンションは震度7に耐えられない可能性が高い
    1. 過去の大地震が示す旧耐震の脆弱性
    2. 「震度5強程度で倒壊しない」基準の限界とは
    3. すべてが危険とは限らない?構造や地盤による違い
  3. 命と資産を守る「耐震診断」のすべて
    1. 耐震診断とは?何をどこまで調べるのか
    2. 耐震診断の基本的な流れと期間
    3. 気になる費用相場と補助金・助成金制度【2026年最新情報】
    4. 耐震診断は義務?「耐震改修促進法」のポイント
  4. 耐震診断結果の見方と判断基準「Is値」を理解しよう
    1. Is値(構造耐震指標)とは?建物の粘り強さを示す数値
    2. Is値「0.6」が安全性を判断するボーダーライン
    3. Is値以外の指標もチェック!総合的な評価が重要
  5. 耐震性が低いと判断されたら?耐震補強工事という選択肢
    1. 主な耐震補強工事の種類と特徴
    2. 工事費用の目安と工期
    3. 最大のハードル「管理組合での合意形成」をどう乗り越えるか
  6. 旧耐震マンションとの賢い付き合い方【購入・居住・売却】
    1. 【購入検討者へ】価格以外のチェックポイントとリスク管理
    2. 【居住者・所有者へ】まず管理組合で始めるべきこと
    3. 【売却検討者へ】耐震診断の有無が資産価値に与える影響
  7. まとめ:不安を安心に変える第一歩は「知る」ことから

そもそも「旧耐震基準」とは?新耐震基準との決定的違い

まず、すべての基本となる「耐震基準」について正しく理解することが重要です。「旧耐震」と「新耐震」では、建物の安全設計の思想が根本的に異なります。

1981年5月31日を境とする建築基準法の大きな転換点

日本の建物の耐震性に関する基準は、建築基準法によって定められています。この基準は、過去の大地震の教訓をもとに、何度も改正が重ねられてきました。その中でも最も大きな転換点となったのが、1981年(昭和56年)6月1日の法改正です。

この日を境に、それ以前の基準を「旧耐震基準」、それ以降の基準を「新耐震基準」と呼びます。

  • 旧耐震基準: 1950年に制定され、1981年5月31日までの建築確認で適用された基準。
  • 新耐震基準: 1978年の宮城県沖地震の甚大な被害を教訓に、1981年6月1日から適用されている現行の基準。

この法改正は、日本の建築史における極めて重要な出来事であり、マンションの安全性を語る上で欠かせない知識です。

想定する地震の規模の違い【震度5強】と【震度6強~7】

旧耐震基準と新耐震基準の最も大きな違いは、想定している地震の揺れの大きさです。

基準想定する地震の規模目指す建物の状態
旧耐震基準震度5強程度の揺れ(中地震)建物が倒壊・崩壊しない。破損しても補修すれば生活可能。
新耐震基準震度5強程度の揺れ(中地震)ほとんど損傷しない。
震度6強~7程度の揺れ(大地震)倒壊・崩壊せず、人命を守る。

表を見てわかる通り、旧耐震基準では「震度6強~7」という、現代の日本で実際に発生している大規模な地震が明確に想定されていませんでした。 一方、新耐震基準では、大地震が発生しても「人命を守ること」を最低限の目標として、建物が即座に倒壊・崩壊しないような強度を求めています。

この「想定する震度の違い」が、両者の安全性における決定的な差となっています。

あなたのマンションはどっち?竣工日ではなく「建築確認日」で判断

「うちのマンションは1982年完成だから新耐震だ」と安心するのは、少し早いかもしれません。
新耐震基準か旧耐震基準かを判断する上で重要なのは、建物が完成した「竣工日」ではなく、設計図が法的に認められた「建築確認日(建築確認済証の交付日)」です。

建築確認の申請が1981年5月31日までに行われていれば旧耐震基準、同年6月1日以降であれば新耐震基準が適用されます。
マンションのような大規模な建物は、建築確認から竣工まで1〜2年かかることも珍しくありません。そのため、例えば「1982年竣工」のマンションであっても、建築確認が1981年5月以前であれば、旧耐震基準で建てられている可能性があるのです。

正確な建築確認日は、マンションの管理組合が保管している「確認済証」や「検査済証」で確認できます。ご自身のマンションがどちらの基準で建てられているか不明な場合は、まず管理組合に問い合わせてみましょう。

【結論】旧耐震マンションは震度7に耐えられない可能性が高い

では、本題である「旧耐震マンションは震度7に耐えられるのか?」という問いに対する答えです。
結論から言えば、「耐えられない可能性が高い」と言わざるを得ません。もちろん、すべての旧耐震マンションが即座に倒壊するわけではありませんが、そのリスクは新耐震基準の建物に比べて格段に高いのが現実です。

過去の大地震が示す旧耐震の脆弱性

この結論を裏付けるのが、過去の大地震における被害データです。

1995年の阪神・淡路大震災では、旧耐震基準で建てられた建物に被害が集中しました。 建築震災調査委員会の報告によると、旧耐震基準(1972年〜1981年)の建物では約12%が倒壊・崩壊または大破したのに対し、新耐震基準(1982年以降)の建物ではその割合が大幅に減少したことが示されています。

さらに記憶に新しい2016年の熊本地震では、震度7の揺れが2度も観測されるという前例のない事態が発生しました。 この地震でも、旧耐震基準の建物に被害が集中する傾向が見られました。 国土交通省の調査によれば、旧耐震基準の建物の倒壊率は28%にのぼり、新耐震基準の建物の約11%と比較して、その脆弱性が改めて浮き彫りになりました。

これらの歴史的な事実は、旧耐震基準の建物が震度6強~7クラスの大地震に対して、極めて高いリスクを抱えていることを物語っています。

「震度5強程度で倒壊しない」基準の限界とは

旧耐震基準は、あくまで「震度5強程度の揺れで倒壊しない」ことを目標としています。 これは、当時の地震学の知見に基づいたものであり、決して欠陥設計だったわけではありません。

しかし、その後の研究や実際に発生した大地震により、日本列島では震度6強や7といった、はるかに大きなエネルギーを持つ地震が起こりうることが明らかになりました。旧耐震基準の限界は、この「想定外の揺れ」に対応できない点にあります。

新耐震基準では、大地震時に建物がある程度損傷することは許容しつつも、中にいる人の命を守るために「倒壊・崩壊はしない」という粘り強さが求められます。この安全思想の差が、大地震発生時の被害の差として現れるのです。

すべてが危険とは限らない?構造や地盤による違い

ただし、「旧耐震=即危険」と短絡的に考えるべきではありません。同じ旧耐震マンションでも、その安全性は様々な要因によって変わってきます。

  • 建物の形状: 長方形や正方形など、シンプルでバランスの取れた形状の建物は、複雑な形状の建物に比べて地震の揺れに強い傾向があります。
  • ピロティ構造の有無: 1階部分が駐車場や店舗になっており、壁が少なく柱だけで支えられている「ピロティ構造」のマンションは、地震時に1階部分が潰れるように倒壊するリスクが高いことが指摘されています。熊本地震で大破したマンションも、このピロティ形式でした。
  • 地盤の強さ: 軟弱な地盤の上に建っているマンションは、強固な地盤のマンションに比べて揺れが大きくなり、被害が拡大しやすくなります。
  • 維持管理の状態: 定期的な修繕やメンテナンスが適切に行われているかどうかも、建物の耐久性に大きく影響します。コンクリートのひび割れや鉄筋の腐食が放置されていると、耐震性は著しく低下します。

このように、個々のマンションが持つ条件によってリスクの度合いは異なります。だからこそ、専門家による客観的な評価、すなわち「耐震診断」が不可欠となるのです。

命と資産を守る「耐震診断」のすべて

旧耐震マンションのリスクを正しく把握し、適切な対策を講じるための第一歩が「耐震診断」です。これは、いわば建物の健康診断。専門家が建物の耐震性能を調査し、大地震に対する安全性を評価します。

耐震診断とは?何をどこまで調べるのか

耐震診断とは、既存の建築物が現行の耐震基準(新耐震基準)を満たしているかどうかを評価する調査です。 1981年5月31日以前の旧耐震基準で建てられたマンションを対象に、専門家が図面調査と現地調査を行い、構造的な強度や粘り強さを計算・評価します。

調査内容は、診断のレベルによって異なりますが、一般的に以下の項目が含まれます。

  • 図面調査: 設計図書(構造図、平面図など)を基に、建物の基本的な構造や部材の寸法を確認します。
  • 現地調査:
    • コンクリートの強度: 専用の機材でコンクリートの硬さを測定したり、一部を採取(コア抜き)して圧縮強度試験を行ったりします。
    • 鉄筋の配置: レーダー探査などで、柱や梁の中にある鉄筋の数や太さ、間隔を確認します。
    • 建物の劣化状況: コンクリートのひび割れ、鉄筋の錆、建物の傾きなどを目視で確認します。
    • 地盤の状況: 周辺の地盤データや過去の資料から、地盤の性状を確認します。

これらの調査結果を基に、複雑な構造計算を行い、建物の耐震性能を客観的な数値で評価します。

耐震診断の基本的な流れと期間

マンションの耐震診断は、一般的に以下のステップで進められます。期間はマンションの規模や調査内容によりますが、全体で半年から1年程度かかるのが一般的です。

  1. 管理組合での合意形成: まず、耐震診断を実施することについて、管理組合の総会で決議(普通決議:過半数の賛成)を得る必要があります。
  2. コンサルタントの選定・契約: 耐震診断を依頼する設計事務所やコンサルタントを選定し、契約を結びます。
  3. 予備調査(1次診断): 設計図書の確認や目視による現地調査を行い、耐震性能を概算で評価します。この段階で明らかな問題がなければ、ここで終了することもあります。
  4. 本調査(2次・3次診断): 予備調査で耐震性に懸念があると判断された場合、より詳細な現地調査(コンクリートのコア抜き、鉄筋探査など)と精密な構造計算を行います。
  5. 診断結果の報告: 調査・計算結果をまとめた報告書が提出され、管理組合向けに説明会が開かれます。

「2」のコンサルタントの選定に関してですが、診断の質を左右する非常に重要なプロセスであり、実績豊富な専門家に依頼することが成功の鍵となります。例えば、マンションの耐震診断や建物調査で多くの実績を持つ株式会社T.D.Sのような専門会社に相談するのも一つの方法です。信頼できるパートナーとして株式会社T.D.Sをはじめとする複数の業者から見積もりを取り、比較検討すると良いでしょう。

気になる費用相場と補助金・助成金制度【2026年最新情報】

耐震診断の費用は、マンションの規模(延床面積や戸数)、構造、図面の有無などによって大きく変動します。

【費用相場の目安】
一般的なマンションの場合、1戸あたり5万円~20万円程度、総額では数百万円から1,000万円以上になることもあります。

費用は決して安くありませんが、多くの自治体では耐震化を促進するために補助金・助成金制度を設けています。 これらの制度を賢く活用することで、管理組合の負担を大幅に軽減することが可能です。

例えば、東京都では2026年度予算案にマンションの耐震診断や改修費用の一部を助成するための予算を盛り込む方針を示しています。 制度の内容や補助率、上限額は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村の建築指導課や防災課などに問い合わせてみましょう。

【補助金利用の注意点】
補助金の申請は、必ず耐震診断の契約前に行う必要があります。 契約後に申請しても受理されないケースがほとんどですので、計画段階で必ず自治体に相談してください。

耐震診断は義務?「耐震改修促進法」のポイント

「耐震診断は法律で義務付けられているの?」という疑問を持つ方もいるでしょう。
1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに制定された「耐震改修促進法」により、旧耐震基準の建物所有者には、耐震診断を行い、必要に応じて改修に努める「努力義務」が課されています。

さらに、2013年の法改正により、以下の条件に当てはまる一部の建物については、耐震診断の実施と結果報告が「義務化」されました。

  • 不特定多数の人が利用する大規模な建物(病院、店舗、ホテルなど)
  • 避難弱者が利用する大規模な建物(学校、老人ホームなど)
  • 都道府県や市町村が指定する緊急輸送道路沿いの建物

一般的な分譲マンションの多くは努力義務にとどまりますが、緊急輸送道路に面している場合などは義務化の対象となる可能性があります。 いずれにせよ、法律の義務の有無にかかわらず、居住者の安全確保と資産価値の維持という観点から、耐震診断の実施は極めて重要であると言えます。

耐震診断結果の見方と判断基準「Is値」を理解しよう

耐震診断の結果は、専門的な数値や指標が並んだ報告書として提出されます。その中でも特に重要なのが「Is値(アイエスち)」です。この数値を正しく理解することが、マンションの安全性を客観的に判断する鍵となります。

Is値(構造耐震指標)とは?建物の粘り強さを示す数値

Is値(Seismic Index of Structure)とは、建物の耐震性能を表す指標のことです。 この数値は、建物の「強度(地震の力に耐える力)」と「靭性(じんせい:変形する能力、粘り強さ)」の両方を考慮して算出されます。

  • 強度が高い: 硬くて頑丈だが、限界を超えると一気に破壊される可能性がある。
  • 靭性が高い: 揺れに対してしなやかに変形し、エネルギーを吸収することで、すぐには倒壊しない。

Is値は、この強度と靭性のバランスを総合的に評価したもので、数値が大きいほど耐震性能が高いことを意味します。

Is値「0.6」が安全性を判断するボーダーライン

耐震改修促進法では、Is値による耐震性能の評価基準を以下のように定めています。

Is値耐震性能の評価
0.6以上倒壊または崩壊する危険性が低い
0.3以上 0.6未満倒壊または崩壊する危険性がある
0.3未満倒壊または崩壊する危険性が高い

つまり、Is値が「0.6」以上あれば、新耐震基準と同等の安全性を有しており、震度6強~7クラスの大地震に対しても倒壊・崩壊する危険性は低いと判断されます。 逆に0.6を下回る場合は、何らかの耐震補強が必要であると考えられます。

過去の地震被害の調査でも、Is値が0.6以上の建物は被害が軽微である一方、0.6を下回るにつれて中破以上の被害が増え、0.4以下の建物では大破や倒壊に至るケースが多いことが報告されています。

Is値以外の指標もチェック!総合的な評価が重要

Is値は最も重要な指標ですが、耐震診断報告書には他にも見るべきポイントがあります。

  • CTU・SD値: Is値を構成する要素で、建物の形状やバランス、経年劣化の度合いなどを評価する指標です。この数値が低いと、Is値も低くなる傾向があります。
  • 階ごとのIs値: Is値は各階、各方向(X方向、Y方向)で算出されます。建物全体では0.6以上でも、特定の階(特に1階)や特定の方向だけが極端に低い場合があります。最も低いIs値が建物の弱点となるため、注意が必要です。
  • 具体的な指摘事項: 報告書には、数値評価だけでなく、「この部分の壁にひび割れが多い」「この柱の鉄筋量が不足している」といった具体的な問題点が文章で記載されています。これらの指摘事項を理解し、どのような補強が必要なのかを把握することが大切です。

診断結果について不明な点があれば、診断を行った専門家に遠慮なく質問し、分かりやすい説明を求めましょう。

耐震性が低いと判断されたら?耐震補強工事という選択肢

耐震診断の結果、Is値が0.6を下回り、耐震性に問題があると判断された場合、次のステップとして「耐震補強工事」が検討されます。これは、建物の弱点を補強し、耐震性能を新耐震基準レベルまで引き上げるための工事です。

主な耐震補強工事の種類と特徴

マンションの耐震補強工事には様々な工法があり、建物の構造や診断結果、予算に応じて最適な方法が選択されます。

工法概要メリットデメリット
耐力壁の増設既存の壁を厚くしたり、新たに鉄筋コンクリートの壁を追加したりして強度を高める。耐震性の向上効果が高い。比較的コストを抑えやすい。窓が塞がれたり、部屋が狭くなったりすることがある。
鉄骨ブレースの設置柱と梁の間に「X」字や「K」字型の鉄骨の筋交い(ブレース)を設置し、建物の変形を防ぐ。居住空間への影響が少ない工法もある。採光や通風を確保しやすい。見た目が変わる。設置場所によっては圧迫感がある。
柱の補強既存の柱に炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて強度と粘り強さを向上させる。居住しながらの工事が可能。工期が比較的短い。コストが比較的高めになることがある。
外付けフレーム補強建物の外側に鉄骨フレームや壁を増設して補強する。居住者への影響が少ない。デザイン性を高めることも可能。敷地に余裕が必要。コストが高額になりやすい。

これらの工法を単独または組み合わせて実施することで、Is値0.6以上を目指します。

工事費用の目安と工期

耐震補強工事の費用は、工事内容やマンションの規模によって大きく変動しますが、一般的に1戸あたり100万円~250万円程度が目安とされています。総額では数千万円から数億円にのぼる大規模な工事となります。

工期も工事内容によりますが、半年から1年以上かかることが一般的です。工事中は騒音や振動、工事車両の出入りなど、居住者の生活に一定の影響が出ます。

耐震診断と同様に、耐震補強工事にも多くの自治体で補助金・助成金制度が用意されています。 費用の負担を軽減するためにも、これらの制度を最大限に活用することが重要です。

最大のハードル「管理組合での合意形成」をどう乗り越えるか

耐震補強工事を実施する上で、技術的な問題以上に大きなハードルとなるのが、管理組合での合意形成です。

耐震補強工事は、建物の形状や効用を著しく変更する「共用部分の重大変更」にあたるため、区分所有法に基づき、総会での特別多数決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上の賛成)が必要となります。

しかし、多額の費用負担や工事中の生活への影響、高齢化による将来への不安などから、反対意見が出ることも少なくありません。合意形成を円滑に進めるためには、以下のような取り組みが重要です。

  • 情報提供と意識共有: 耐震診断の結果や工事の必要性について、専門家を交えた説明会を何度も開催し、リスクと対策を全戸で共有する。
  • 将来ビジョンの提示: 「安全性の向上」だけでなく、「資産価値の維持・向上」という側面も強調し、工事がもたらす長期的なメリットを伝える。
  • 費用負担の計画: 修繕積立金の活用や、補助金・融資制度の調査など、具体的な資金計画を早期に提示し、各戸の負担額を明確にする。
  • 粘り強い対話: アンケートや個別面談などを通じて、反対意見の背景にある不安や懸念を丁寧にヒアリングし、解決策を一緒に探る姿勢を持つ。

時間はかかりますが、住民一人ひとりが「自分たちの問題」として捉え、粘り強く対話を重ねることが、合意形成への唯一の道と言えるでしょう。

旧耐震マンションとの賢い付き合い方【購入・居住・売却】

最後に、それぞれの立場から見た旧耐震マンションとの向き合い方について整理します。

【購入検討者へ】価格以外のチェックポイントとリスク管理

旧耐震マンションは、新耐震に比べて価格が安く、好立地な物件が多いという魅力があります。 しかし、その安さには相応のリスクが伴うことを理解しなければなりません。

購入前のチェックリスト

  • 耐震診断の実施有無と結果: 最も重要なポイント。Is値が0.6以上か必ず確認する。診断未実施の物件は、原則として避けるのが賢明です。
  • 管理組合の防災意識: 総会の議事録などを確認し、耐震化に関する議論がされているか、防災への意識が高いかを確認する。
  • 長期修繕計画と積立金: 将来の耐震補強工事を見据えた計画があるか、積立金は十分に貯まっているかを確認する。積立金が不足していると、将来的に一時金として多額の費用負担が発生する可能性があります。
  • 住宅ローンと税制優遇: 金融機関によっては、旧耐震物件への融資に消極的な場合があります。 また、住宅ローン控除などの税制優遇が受けられない可能性も高いです。 事前に確認が必要です。

これらのリスクを許容できるか、将来の費用負担に備えられるかを冷静に判断することが求められます。

【居住者・所有者へ】まず管理組合で始めるべきこと

現在、旧耐震マンションにお住まいの方は、まずご自身のマンションの現状を把握することから始めましょう。

  1. 管理組合への働きかけ: もし耐震診断が未実施であれば、理事会や総会で実施を提案することが第一歩です。
  2. 情報収集と勉強会: 自治体が開催するセミナーに参加したり、専門家を招いて勉強会を開いたりして、住民全体の知識と防災意識を高めることが重要です。
  3. アンケートの実施: 住民が耐震性についてどのような不安や意見を持っているかアンケート調査を行い、課題を可視化することも有効です。

自分一人の力で動かすのは難しいかもしれませんが、同じ不安を持つ仲間と協力し、粘り強く働きかけることで、管理組合全体を動かすきっかけになります。

【売却検討者へ】耐震診断の有無が資産価値に与える影響

旧耐震マンションを売却する際、耐震診断を実施しているかどうかは、売却価格や売却のしやすさに大きく影響します。

  • 耐震診断済み(Is値0.6以上): 「新耐震基準適合」を証明できるため、買主の安心感につながり、比較的スムーズな売却が期待できます。資産価値の低下を最小限に抑えられるでしょう。
  • 耐震診断済み(Is値0.6未満): 耐震性に問題があることが明確になるため、価格交渉で不利になる可能性があります。ただし、買主はリスクを具体的に把握できるため、補強工事を前提とした購入検討につながることもあります。
  • 耐震診断未実施: 耐震性が不明なため、多くの購入検討者から敬遠される可能性が高いです。 結果的に、大幅な価格の引き下げを余儀なくされたり、売却自体が長期化したりするリスクがあります。

宅地建物取引業法では、売買時に耐震診断の有無を重要事項として説明することが義務付けられています。 安全性が証明されていない物件は、市場で評価されにくいのが現実です。売却を有利に進めるためにも、耐震診断の実施は非常に有効な手段と言えます。

まとめ:不安を安心に変える第一歩は「知る」ことから

旧耐震基準のマンションは、震度6強~7クラスの大地震に対して倒壊・崩壊するリスクが新耐震基準の建物よりも高いことは、過去のデータが示す紛れもない事実です。

しかし、すべての旧耐震マンションが等しく危険なわけではありません。その本当の安全性を知る唯一の方法が、専門家による「耐震診断」です。

耐震診断によって建物の現状を正しく「知る」こと。それが、漠然とした不安を、具体的な対策へと変えるための最も重要で確実な第一歩です。診断の結果、安全性が確認できれば安心して住み続けられますし、もし問題が見つかっても、耐震補強工事という次の一手を考えることができます。

あなたとあなたの大切な人の命、そしてかけがえのない資産を守るために、まずはご自身のマンションの管理組合で、耐震診断について話し合うことから始めてみてはいかがでしょうか。行動を起こすことで、未来の安心はきっと手に入ります。

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