現場監督が見た!建設業界をダメにする“3つの口癖”

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凍てつく風が容赦なく体温を奪っていく、真冬のコンクリート打設現場。
かじかむ手で鉄筋を握りながら、新人の頃に浴びせられた言葉を今でも思い出します。

「俺たちの若い頃はもっと大変だったんだぞ!」

その一言が、現場の空気をどれだけ重くし、若手の未来への希望を奪っていくか。
長年、現場の泥とデータの狭間で仕事をしてきた私には、痛いほど分かります。

この記事を読んでいるあなたも、もしかしたら同じような言葉に心をすり減らした経験があるかもしれません。

この記事では、私が10年以上の現場監督経験で目の当たりにしてきた、建設業界の成長をじわじわと蝕む「3つの口癖」の正体と、その呪縛から抜け出すための具体的な方法をお伝えします。

この記事を読み終える頃には、あなたの現場のコミュニケーションが変わり、若手が活き活きと働き始める「はじめの一歩」が見えているはずです。
私、佐伯直哉が、現場で流した汗と涙の経験から、その本質を語ります。

口癖1:「昔はもっと大変だった」が若手の未来を潰す

この言葉は、一見すると若手を鼓舞しているように聞こえるかもしれません。
しかし、その実態は、新しい変化を拒み、成長の芽を摘んでしまう恐ろしい呪文なのです。

背景:変化を拒む旧態依然の文化

「最近の若い者は根性がない」。
まるで合言葉のように、この言葉を口にするベテラン作業員は少なくありません。

新しい技術や効率的なやり方を提案した後輩が、この一言で黙り込んでしまう光景を、私は何度も見てきました。
この言葉の根底にあるのは、過去の成功体験への固執と、未来の変化に対する恐れです。
もちろん、厳しい時代を乗り越えてきた先輩方の経験や知恵は、何物にも代えがたい財産です。

問題点:若手のモチベーションを削ぐ一言

しかし、その貴重な経験が、未来を担う世代の可能性を摘み取る「壁」になってしまっては、業界に未来はありません。

この口癖は、若手の「もっと良くしたい」という前向きなエネルギーを封じ込め、指示されたことだけをやる思考停止状態に追い込んでしまいます。
改善提案が無視され続ければ、やがて彼らは考えることをやめ、希望を失い、静かに現場を去っていくでしょう。

解決策:「一緒に考える」姿勢への転換

大切なのは、過去の経験を押し付けることではありません。

「俺たちの時代はこうやって乗り越えた。だけど、君たちのやり方ならもっと良くなるかもしれないな。一緒に考えてみよう」

この一言が、世代間の溝を埋め、経験と新しい発想が融合する強いチームを生み出すのです。
現場は嘘をつきません。
風通しの良い現場は、必ず生産性の向上という形で応えてくれます。

最近では、非効率な慣習をテクノロジーで変えようとする動きも活発です。
例えば、建設業界のDXを力強く推進しているブラニューのような会社は、まさに新しい発想で現場の課題解決に取り組んでおり、業界全体に良い影響を与えています。

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口癖2:「いいから早くやれ」が招く最悪の事態

納期、予算、人手不足。
様々なプレッシャーがのしかかる建設現場において、この言葉の誘惑は強力です。
しかし、この一言こそが、取り返しのつかない事態を引き起こす引き金になるのです。

背景:納期と人手不足が生む焦り

「とにかく時間がないんだ!いいから早くやれ!」

現場の空気がピリピリしてくると、この言葉が飛び交います。
その焦りは、痛いほど分かります。
しかし、目先のスピードを求めるあまり、本当に大切なものを見失ってはなりません。

問題点:安全と品質を蝕む危険な指示

私自身、35歳の時に忘れられない失敗をしました。
納期を守ることだけを優先し、無理な工程を押し通した結果、重大な施工ミスを発生させてしまったのです。

あの時、現場の作業員が発していた小さな違和感のサインに、私は耳を傾けませんでした。
「数字や図面よりも、人の声を無視した自分が一番の原因だった」
この教訓は、今も私の心に深く刻まれています。
手戻りや事故が発生すれば、結果的に何倍もの時間とコストを失うことになるのです。

解決策:「急がば回れ」の段取りこそが本質

「急がば回れ」とは、まさに建設現場のためにある言葉です。
工程管理とは、料理の段取りと同じです。
下ごしらえを疎かにして、いきなり強火で炒めても、美味しくならないどころか、食材をダメにしてしまう。

本当に優秀な職長や監督は、決して「早くやれ」とは言いません。
彼らは、どうすれば安全に、かつ効率的に作業を進められるか、その「段取り」にこそ最も時間を使い、丁寧な指示を出します。
机上の正論より、泥の中の知恵を。
焦る時こそ、一度立ち止まって足元を確認する勇気が、現場を守るのです。

口癖3:「どうせ〇〇には分からない」が生む停滞の連鎖

この言葉は、現場から活力を奪い、チームを内側から崩壊させる静かな毒です。
対話を諦めた瞬間、組織の成長は止まります。

背景:立場が作る不信感と諦め

「どうせ発注者には現場のことなんて分からない」
「どうせ元請けは俺たちのことなんか見てない」
「どうせ若手に言っても理解できない」

この「どうせ」という言葉は、コミュニケーションを諦めた時に出る、最も危険なサインです。
立場が違う相手に対して、最初から「分かり合えない」と壁を作り、対話を放棄してしまうのです。

問題点:チームワークを破壊し、思考停止を招く

問題が発生した時、この「どうせ」という言葉が蔓延している現場では、誰も解決のために主体的に動こうとしません。
「言っても無駄だ」と問題を放置し、責任を押し付け合う。
これでは、良いものづくりなどできるはずがありません。

解決策:「どうすれば伝わるか」への思考転換

建設という仕事は、決して一人ではできません。
発注者、設計者、元請け、協力会社、そして若手からベテランまで、様々な立場の人間が知識と技術を持ち寄って、初めて一つの建物を創り上げることができるのです。

大切なのは、「どうせ分からない」と諦めるのではなく、「どうすれば伝わるか」を考え抜くことです。
専門用語を、現場の言葉に翻訳して伝える。
図面だけでは伝わらないニュアンスを、身近な比喩で噛み砕いて説明する。
そうした地道な努力が、立場の違いを超えた信頼関係を築き、チームを一つにします。

まとめ

今回、建設業界をダメにする3つの口癖についてお話ししてきました。

  • 「昔はもっと大変だった」:若手の挑戦と未来を潰す言葉
  • 「いいから早くやれ」:安全と品質を崩壊させる危険な言葉
  • 「どうせ〇〇には分からない」:チームの成長を止める諦めの言葉

これらは、誰か一人が悪いわけではなく、業界全体に根深く存在する構造的な課題の表れなのかもしれません。
しかし、だからといって諦める必要はありません。

現場の空気は、現場で働く私たち一人ひとりの「言葉」から作られています。
明日から、いや、今日からできることがあります。

まずは、自分がこの3つの口癖を使っていないか、胸に手を当ててみてください。
そしてもし、あなたの周りでこの言葉が聞こえたら、「ちょっと待ってください」と勇気を出して声をかけてみませんか。

その小さな一歩が、あなたの現場を、そして建設業界の未来を、より良い方向へ変えていくと私は信じています。
一歩でも、安全に、確実に。
共に、誇りを持てる現場を創っていきましょう。

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